90年代ＣＣＭ界で最も成功した黒人アーティスト
1990年代の数年間、コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージックで最もホットな黒人のアーティストといえば、4人組（後にトリオ、現在はデュエット）のAnointedでした。
彼らはソウルを感じさせるボーカルとポップなリズムで、当時は黒人アーティストに決して優しくなかったCCM音楽界の頂点に上り詰めました。
「The Call」「Revive us」「Under The Influence」や「It’s in God’s hands now」などの曲は、彼らの評判とヤングアダルトのファン層をしっかりと確立しました。
2作目「The Call」の大ヒットで一躍スーパースターに
アノインテッドのオリジナルメンバー4人は、全員オハイオ州コロンバスで生まれ、地元の教会で歌って育ちました。
スティーブ・クロフォードと妹のダドラ・クロフォード・グレートハウスは、幼馴染のメアリー・ティラー、デニス・ウォールズと1992年頃にグループを結成します。彼らはすぐに、ワード・レコードが配給するインディペンデント・レーベル、「ブレインストーム・レコード」との制作契約を勝ち取ります。
彼らがプロデュースと作曲を担当し、2週間でアルバムがレコーディングされました。当時流行っていたクラシック・ソウルの要素を取り入れたCD「Spiritual Love Affair」は、ゴスペルチャートで32位を記録しました。
このプロジェクトの成功により、グループはWord Recordsと直接契約し、プロデューサーのMark HeimermannとChris Harrisにより、より洗練されたスタイルへと変化を遂げます。
2作目の「The Call」は、白人のクリスチャン・マーケットで弾丸のようにヒットしましたが、あまりに白人ファン層から圧倒的に受け入れられたためか、それまでの支持基盤であった僅かな黒人ゴスペル・マーケットは彼らから離れ、彼らはCCMアーティストのスターという位置づけがはっきりします。このアルバムは30万枚近くを売り上げ、グラミー賞にノミネートされ、ダブ賞を3つ獲得します。シングル「イッツ・イン・ゴッズ・ハンズ・ナウ」はR&Bシングル・チャートで40位、クラブ・チャートで37位を記録しました。
しかし、彼らがブラック・ゴスペルを捨ててCCMラジオに出演したというネガティブな一般の解釈は彼らを悩ませていました。「それは誤解だ」とウォールズはGospel Industry Today誌に語っています。「多くの人は、私たちがゴスペル・レーベルと契約して、それからCCMに移行したと思っています。でも最初のアルバムから、私たちはコンテンポラリー・クリスチャン・アーティストとして参入していました。ゴスペル・レーベルとの契約はありませんでした”。
彼らは元からCCMアーティストであり、金や名声に目がくらんで市場の大きいCCM界に移ったりしたわけではないということを言いたかったようですね。
グループの崩壊～デュオへの変換
1995年頃、彼らの成功の絶頂期に、メアリー・ティラーは、コンサルタントによる搾取や、グループからの不当な扱いに我慢できずに脱退します。彼女は、グループとそのマネージメントに対して250万ドルの訴訟を起こしました。その訴訟の中で彼女は彼らのマネージャーからセクハラを受けたと主張しました。「この訴訟は、私が決して意図していなかったことです。」とティラーはCCM誌に語りました。
仲の良い幼馴染で結成したアノインテッドだったが、有名になり巨大化したグループはたくさんの人間が関与し、多くの利権を生み出したためにとてもネガティブな出来事ばかりが生まれ始めました。デニス・ウォールズは後にCCM誌に簡潔にこう語っています。”あの時、私たちにできることは何もなかった・・・ “。
その後もトリオとして、クリスチャン・ポップス市場で成功を収め続けたが、1999年にはウォールズもグループを脱退することを選択しました。デュオになったクロフォード兄妹は、よりアーバンなテイストのサウンドを追求し、2002年に『If We Pray』をリリースします。これは良いアルバムでしたが、セールス的にはあまり芳しくありませんでした。
この時期、ワード・レコードはワーナー・ミュージック・グループに売却されました。ブラックミュージック部門は閉鎖され、Anointedは登録メンバーから外されました。しかし、ソニー・ミュージックのゴスペル部門は、すぐに彼らと契約しました。
一方、ティラーは夫のラリーとともにメアリー・ティラー・ミニストリーを運営し、現在も教会の集会で歌い、講演しています。また、自身のレーベル「Eve of Destiny」から「The Journey」というCDを1枚リリースしています。
元ネタ：The Gospel Legend.com, The Gospel Music Encyclopedia , Gospel Industry Today, Wikipedia ほかいろんな本やネットの情報や過去に先輩に教えてもらった知識
